誰のための補償制度か?

2008年12月13日 14時09分 | カテゴリー: 活動報告

出産育児一時金の引き上げ分は補償制度の保険料

昨日終わった第4回定例区議会本会議で 「練馬区国民健康保険条例の一部を改正する条例」に対し、反対討論をしました。この条例改正は出産育児一時金を35万円から38万円に引き上げるというものです。

3万円の引き上げは、2009年1月1日から開始する「産科医療補償制度」の掛け金に相当する金額を、国庫補助を入れずに、健康保険料から負担になります。
補償制度は必要ですが、この制度には、出産する本人に支給される「出産育児一時金」を本人の承諾を得ずに保険料として流用することなど多くの問題があり、反対です。

その理由は、第1に、この制度は法律に基づいていません。国会審議を必要とせずに、出産育児一時金の引き上げも政令によって行われています。運営組織は財団法人日本医療機能評価機構であり、6社の損害保険会社も民間のため、お金の流れは不透明です。

試算では、年間出生数100万件なので、保険料の総額は300億円です。補償金が3000万円で、補償対象を500から800件と見込んでいますので、150億から240億円を支払い、最低でも60億円、最高で150億円の余剰金が発生します。しかし、その使い道をチェックすることができません。しかも、厚生労働省は「余剰金が出ても制度に加入している分娩機関に返還する予定はない」と言っています。
北欧やニュージーランドでは社会補償制度の一環として「無過失補償制度」を取り入れています。医療事故で障がいを負った場合、医師に過失がなくても、患者に補償金が払われる制度です。一方、「産科医療補償制度」は、国の責任も、監視体制もあいまいで、不十分であり、見直しが必要です。

次に、補償の対象が非常に狭いことです。出生体重2000グラム以上、かつ妊娠期間が、33週以上の重度脳性まひであることが条件です。しかし、先天性の要因がある場合、分娩後の感染症など新生児期の要因がある場合、妊娠もしくは分娩中に妊婦の故意または重大な過失があった場合、天災等の非常事態の場合は補償されません。同じ脳性まひでも原因が先天的か後天的かによって、補償に格差が生じることは、納得できません。障がい者差別につながることから、障がい者団体からも再検討を求める意見が出されています。

また、分娩機関が胎児心拍モニターなどを使って、正常分娩であったことを証明する必要があり、分娩機関にも妊婦にも負担となります。さらに分娩機関は、保険の加入手続き、妊産婦情報の登録、分娩実績の報告、掛け金の支払いと事務作業も増えます。「出産育児一時金での保険料負担」公表後、保険の加入率はあがっているが、分娩機関は減少しているとの報告もあります。

健康保険組合など各保険者の負担増につながりますが、厚生労働省は「各保険者の協力を取り付けており、保険料にも大きく跳ね返らない」としています。しかし、高齢者医療の支援金が負担となり、健康保険組合の解散が問題となっていることから、更なる負担増が重荷になることも問題です。

生活者ネットワークで行った経産婦や妊婦を対象とした聞き取り調査では、分娩費用が35万円を超える人が多く、70万円という回答もありました。出産できる病院を見つけるのが大変な上に、高額な費用が負担となっているのが現状です。今回の条例改正でも、負担の軽減にはなりません。

産科医不足に関心が高まったことから、発足を急ぎ、安易で中途半端な制度になっています。出産による妊産婦や新生児への補償や医師の訴訟リスクを低くするためには、公的な「無過失補償制度」が必要だと思います。